最近、無性に好きになった歌がある。「無性に」と、書いたのは以前から好きだったが、ただ僕の歌うレパートリーになかっただけのこと。それがどうしたわけか、さるスナックで知らない女性が歌っているのを聞いたとき、胸にジーンとくるものがあった。

もったいぶるのは止めよう。何という歌かと言えば、あまりにも有名な、イルカさんが歌っている「なごり雪」という曲である。伊勢正三さんの作詞作曲だったっけ?。歌詞もメロディーもすこぶる良い。

「汽車を待つ君の横で僕は時計を気にしてる。季節はずれの雪が降っている。東京で見る雪はこれが最後ねと、さびしそうに君がつぶやく。・・・・・・。動き始めた汽車の窓に顔をつけて、君は何かを言おうとしている、・・・・」。いやああ、。なんと素晴らしい詩なんだろう。

僕も何回となく、駅のプラットホームから人を見送ったことがある。そんな時の気持ちと言えば、「早く汽車がでないかなあーーー」という思いばかり。汽笛が鳴って「おや、出るかな?」と手を振れば、汽車はまだたたずんだまま。こんな時って、きまりが悪くて、顔を背けてしまう。やっと出て、やれやれだ。「駅の喫茶店でコーヒーでも飲んで帰るか」という事になる。

ただ一度だけ、感極まった時がある。僕がさる会社に就職して、アパートを借りた頃、母が遠方からやってきて、あれこれと部屋の中の段取りをしてくれた。そんな母を駅まで送り、プラットホームで見送ったときのこと。母の淋しそうな横顔を見て、涙があふれそうになった。じっとこらえた。涙を流したのは汽車が出た後である。

その時は思わなかったが、今、振り返って考えてみると、男兄弟三人いて、たとえ次男坊であっても、母親にとって子供は優劣なく、かわいいものなんだと。残念ながら僕には三人も子供がいない。

この「なごり雪」という歌は、大学を卒業して故郷に帰っていく恋人との別れを描いたものかもしれない。あるいはそうでないかも?。目の当たりに光景が浮かんでくる。僕だったら母の時とおなじように、「おいおい」と泣くかもしれない。

そう言うわけで、最近はスナックのカウンターレディの「さっちゃん」に、この歌を所望している。イルカさんにも似た声で歌う彼女もまたいい。途中から僕もマイクを握って、彼女の歌のじゃまにならない程度につぶやいている。今の時節と相まって、この歌は最高だ。焼酎も湿っぽくなり、口に注ぐ回数が減ってしまうようだ。そろそろ、「ノリちゃん先生」、もしくは歌の帝王、「安さん」でも伴って、スナックのドアをたたくかあーー。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

この日記について

日記内を検索