車は抜きつ抜かれつしながら高速をひたすら走った。車の波とその向こうに見える風景を眺めながら、皆、何かに思いを馳せていた。多分。まだ見ぬヌーディスト村への期待と、瞬く間に過ぎたこの旅へのほのかな郷愁が心をよぎっていたのだろう。そんな時、スネ夫君が「もう12時を回ったので、どこかで昼飯でも食おうや」と言う。皆、即賛成だ。

車は高速を出て、二車線の道へ入った。相変わらず、ブドウ畑は見え隠れしながら続いていた。しばらくして車は木立の中をぬって走った。静寂な森の中に、大きな古びたホテルが見えた。壁にはツタの葉っぱが縦横無尽に張り付いている。「いやあああーーーロマンチックなホテルだぜ。ラバーと来るには最高!!」と、スネ夫君が言う。ごもっともだ。僕たちは車を降りて、ホテルの玄関口まで歩いた。レストランがあった。料金表を眺めてびっくり。一人あたり云千円もする。「うんん、こりゃあーー高いわ」と、スネ夫君が言う。僕たちはあきらめた。のび太君と僕はホテルをバックに、あたかもここに泊まったかのごとく、メンバー一をカメラに収めた。

後ろ髪を引かれながら、僕たちは新たなレストランを探した。木立を抜けると小さな町に到着した。ナポレオンが流されたという島、セントヘレナみたいな名前の町だった。レストランが軒を並べていた。又、女性のためのエステチックサロンの看板がやたらと目立つ。スネ夫君が「ここは美しくなりたいという女性の願望を満たすべく設けられた避暑地みたいなところ」と言う。ドロ湯、がた湯などがあった。なるほど、ここも温泉地か?。「ところで、目的地は?」とドライバーさんに聞いたところ、ここから、ひと山、ふた山を超えたところにあるという。いやはや遠いところにあるものだ。だからこそ秘境なんだろう。

レストランに入った。都会のレストランと違い、まさに温泉町の食堂と言った感じだ。金髪の若いウエイトレスさんがメニューを持ちながら、「アー・ユー・チャイニーズ?」と聞いてきた。僕たちはよく、そう問われる。ネズ君が「ウィー・アー・ジャパニーズ」と、たどたどしい英語で応えると、ウエイトレスさんは、「にこっ」と笑って、メニューを置いて去った。この笑みは何だったのか?。想像するに、歓迎の笑みだったに違いない。そう解釈しておこう。ビールを注文し、めいめい好きな料理を頼んだ。ここでも、運ばれた料理を見てびっくり。山盛りだ。すべてがラージだ。肉料理を頼んだドラえもん君は、皆の視線が、ばかでかい肉に集中したので、一人で食べるのを悪いと思ったのか、皆に切り分けてくれた。優しいぜ。ドラちゃん。美味しかった。

ランチが終わった。いよいよ、車は山の方へ続いている道を駆け上っていく。もう、左右の風景は木立ばかりだ。舗装されたエスジーカーブに体を何度もぶつけあいながら、僕たちは子供のようにはしゃいだ。行けども、行けども目的地は見えない。一山を超えて下り坂になった。やがて、平地にたどり着くと、ちらほらと民家が見えた。「えええーーっ、この辺?」とあたりを見回せっど、裸族の姿が見えない。ドライバーさん曰く。「もう、一山こえなくちゃねーー」と。「落ち着いて、落ち着いて」と、スネ夫君が皆をなだめた。車はもう一山越えて、下りの中腹にさしかかった。そこから脇道へ入っていった。しばらく走ると道の横に関所みたいな建物が有り、そこから上には車が入れない。中の様子は全く分からない。傍らに駐車場があり、車が何台も停まっていた。のび太君が興奮したような口調で、「一杯客がいるぜ」と嬉しそうに言う。やっと到着したのだ。時は既に午後4時を回っていた。

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