僕の旅日記もあとわずかで完結する。出来れば2007年中に終わらせたい。後、2時間しかない。焦りながらでも、先を急ごう。

僕とのび太君は無言のまま、すっかり乗り慣れていた電車に乗った。色んな思いが胸中に蘇る。人種は違っても好意的に振る舞ってくれたこの地の人々。ただただ、無事に終えつつあるこの旅に乾杯だ。

程なく電車はホテルに近い駅に到着した。荷物を引きずりながら、出口へ向かった。のび太君が通過ゲートの機械にカード式切符を投じた。カニのはさみみたいな扉が開かない。開かないまま切符が戻ってきた。僕が次に切符を投じた。一発でオッケー。再びのび太君が挑戦。開かない。「ジャイアンが入れたからいけないんだよ」と、僕に抗議の一言が。「そんなことはないよ」といって、隣に設けられている案内所へ事情を説明すると、なんと、彼のカード式切符は「ブロウクン」と言われた。「何で僕のが?」と、彼は苦虫をつぶしたような表情になり、ご機嫌斜め。新しいカードに交換出来る場所が近くにあった。一件落着だ。ただ、ここでの時間のロスが思いがけない事態を招く。

路上へ出て、ホテルへ向かった。すぐ近くにあった。あらかじめ予約を入れておいたので良かった。ホテルとの折衝は僕の役目。つたない英語がまあまあ通じたので良かった。僕たちの部屋は最上階の14階。エレベーターで10階より上に行くには、渡された部屋のカードが必要だった。「なるほど、これもセキュリティーの一つか?」と思わず感心した。

部屋はかなり広く、中央にキングサイズのベッドが設置され、何故か枕が四コもある。「ここは 四人で 泊まれる部屋なのか?」と、一瞬、面食らった。「VIP待遇のもてなしだぜ」と嬉しくなったが、やはり、一人じゃ寂しい部屋だ。仕方がない。窓から外を眺めた。見晴らしは最高。夕日にビルが染まっていた。

おっと、こうしてはいられない。僕とのび太君には、当地での最後の遊興が待っていた。ナイトクルージングを予約していたのだ。時間が迫っている。僕たちは焦りながら、一階へ下りた。電車切符のトラブルのため、案内してくれるという通訳さんが既に帰っていた。おまけに、通訳さんの電話番号を記載していたメモを、のび太君が紛失している。

ここで、僕とのび太君はちょっとした言い争いを。「確かに電話番号を聞いたはずだ」と僕が言えば、「いや、聞いていなかった」と、反論する。これじゃあーーー水掛け論だ。予約メモがあったので、それをタクシーさんに見せることにした。ホテルからタクシーを呼んでもらい、運転手さんにメモを見せた。アジア系の運転手さんだった。見事、「分からない。知らない」と断られた。理由が分からない。時間は過ぎていく。僕は通行中の外人女性を呼び止め、尋ねた。親切に教えてくれたが、タクシーに乗るのはもったいないという。電車で行けばいいと言う。そう言って、乗り場を指さしてくれたが、らちがあかない。

僕は半ばあきらめた。予約代金一人あたり一万円近くが無駄になるが、仕方がない。そんなとき、のび太君が別のタクシーがホテルの先の角を曲がったところに停車しているのを見つけた。僕たちは走ってその場へ駆けつけた。メモを見せると、どうやら分かったようで、オッケーという。乗船時間に間に合うかどうか不安だったが、見事、目的の波止場へ到着。運賃は10ドル近くだったので、チップを含め、12ドルを手渡した。喜んでくれたようだ。

僕たちは乗るべき船まで急いだ。乗船待ちをしている人たちが、大勢いた。港から町のビルを眺めた。それはそれは高層ビルにイルミネーションがともしてあり、美しい風景だった。このカメラアングルを、のび太君が見逃すはずがない。大勢人のいる前で、得意のカメラをパチパチとやり出した。周りの人たちが興味深げに彼を見ていた。と言うより、カメラを見ていたのかも知れない。

そうこうするうち、乗船の時間がやってきた。入り口の扉が開き、僕たちは通路を通って、船に乗り込んだ。船は日本で言う観光船の親分みたいなものだった。いよいよ1時間半のクルージングが始まる。指定された席からは夜景の全貌が見渡された。僕とのび太君は、言い争っていたことをすっかり忘れていた。インタバルを置いて出されてくる料理に舌鼓を打ちながら夜景を堪能した。海に浮かんでいるように見えるブリッジのイルミネーションは幻想的な輝きを呈していた。船の中央には広いスペースがあり、老若男女の夫婦、もしくは恋人達か分からないが、音楽に合わせてダンスに興じていた。夜景は見飽きたのだろうか?。率直な意見を述べれば、日本の夜景の美しさと、さほど変わらないという印象だ。ただ、外国で見る夜景だから、それなりに意義があるように思える。料理はおいしかった。僕たちはビールとワインを追加で注文し、すつかりご機嫌。

船は揺れることもなく時間を消化し港に戻った。僕たちの旅は終わった。明日はいよいよ帰国だ。キングサイズのベッドが待っている。初めて一人で寝る一夜。僕はどんな夢をみるのだろうか?。

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