天高く波静か。(2)
どのくらい眠ったのだろうか?。ふっと、時計に目をやると、まだ30分くらいしか経っていなかった。のび太君は、相変わらず首をうなだれたままだ。僕は海をしげしげと眺めた。広い。180度みわたしても、水平線ばかり。「太平洋ひとりぼっち」という本を思い出した。乗員が僕一人なら、まさにそんな感じだ。波間の波紋が、光の反射できらきらと輝いていた。美しい。

僕はふと考えた。この母なる海は一体どこから生じたのか?。何故、地球からこぼれ落ちないのか?。未だに分からない・・・・。もっと物理を勉強しとけば良かった。後悔先に立たずだ。恐らく、複雑な化学反応が海を生み、万有引力が海を引き寄せているのだろう。ならば、何故、化学反応が生じ、万有引力が存在するのか?。ここまで来ると、もうさっぱりだ。話しがあらぬ方向へと行ってしまった。そのときの僕はただただ、この母なる海に畏敬の念を抱くことで精一杯だった。

船内に荷車を引くような音が聞こえた。船内販売だ。飲み物にありつける。僕はのび太君の肩を揺すり、ホットコーヒーを注文した。のび太君は、何を勘違いしたか?、座席の前に立ちはだかる壁に取り付けられていた長方形のクッションみたいな物を手前に引いた。「バリバリ」っと、音がした。

売り子さんがすかさず制した。「あっつ、お客さん、それ違います。テーブルは座席の袖にあります。」と。確かに。座席の袖に小さなテーブルがしまい込んであった。それを引っ張り出すわけだ。しからば壁に取り付けてある長方形の物体は何だ?。恥ずかしくて聞けなかったが、恐らく、なにかの弾みで、船に衝撃が走ったとき、人様の危険を防止するための緩衝具なのだろう。それも無理矢理に剥ぎ取ろうとしたのだからいただけない。僕も最初、それを見たとき、のび太君と同じように考えたから同罪だ。

僕たちは照れ笑いをしながら、小さなテーブルをだして、コーヒーで頭を静めた。船は気持ちよく進んでいく。船内は満席。金融不安、株価下落というが、そんな雰囲気はみじんも感ぜられない。このギャップは何なのか?。まああ、人様の心の内なんて分かるすべもないが、それぞれに、思うことがあるに違いない。それはそれでよい。

コーヒーを飲みのみ、今後のスケジュールを話し合った。


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