送迎バスに揺られて買い物へ(4)
 僕たちは指定された送迎バスに乗り込んだ。一人、行方不明で、23名が同乗した。不思議なもので、旅行社が一緒で、同じバスだと、昔から皆、既知だったかのごとく親近感がわいてくる。互いに笑顔で挨拶なんか交わしている。黒のスーツに、緑色のコートを羽織った女性添乗員さんが、流暢な日本語でガイドを始めた。我々は首を縦に振りながら、彼女の話にうなずく。僕は思った。「もう、すつかりコントロールされてしまったぜ」と。未知の場所へ行くと、これも仕方がない。

ホテルへ行く前に、どこかの免税店へ寄るらしい。一泊しかしない人たちへの配慮なんだろう。バスは中央分離帯のない数車線の道を、ガンガン。ビュービューとばす。添乗員さんの話より、このスピードと、平気で車線変更するドライバーのテクニックの方が心配だった。いみじくも、添乗員さんが言った。「我が国は世界でも一番交通事故の多い国なんですよ。最近は規制が厳しくなったので、幾分かは事故も減りましたけどね・・・・」。この言葉に僕も、のび太君も「ぞーーーーーつ」として、背筋がふるえた。

ここまで来たら、ドライバーさんに命を預けるしかない。平気を装いながら隙間争奪合戦を繰り広げている外の車ばかりを眺めていた。30分程度走ったのだろうか?。とある町の一角にそびえるビルの前で車は停車した。「およよ・・・」。ほっとしたぜ。1時間ほど、買い物タイムと相成った。受付があり、どうやらここでは、割引券と何か小物の品が全員にプレゼントされるらしい。小物に弱い僕たちは、とりあえずビルの中を散策することにした。僕たちには縁のないブランドの店が、ずらりと並んでいる。気後れしながら、ウインドウショッピングを決め込んだ。

僕は一件の店を覗いてみた。「うひゃーーーー」と驚いた。バッグやら宝石類を見ると、○の数がやたらと多い。一、二、三、四、五、・・・と数えてみた。「この通貨単位は何だったっけ?。えーーーつ、円」。とてもとても、僕には縁がありませんぜーーー。のび太君と僕は這々の体で退散した。

ところで僕は思った。「あんなに高価なバッグや宝石類を、一体、誰が何のために身につけるんだろうか?」って。まあ、一般的には女性を高貴で気高く美しく見せるための道具なんだろう。女性達があこがれるのも理解できる。男から見ると「くだらない・・・」としか見えないのだが。美しくブランドで身を固めるのは理解できたとしても、肝心要のものが備わっていなければ、「猫に小判、豚に真珠」みたいなものだ。その肝心要の物とは。やはり「優しさ」の一言に尽きるだろう。

「あんたは自分を何様と思ってんの??・・・。あんたから、そんなこと言われたくないなーーー」。そんな声がした。ごもっともです。つい口が滑ってしまった。それでも、時々思い出す。僕と同い年の友人で、まだ独身の者がいる。彼の口癖はこうだ。「おいは、めっぽう気の優しか女性でなかとあかん。周りは物質欲と気の強か女性ばっかり」と。うんんんん・・。確かに・・・・。僕や友人達が何度か彼にお見合いを斡旋したが、ことごとく砕けた。よく、考えてみると、今時、「めっぽう優しい女性」なんて希少価値の存在だ。観音様ならどこにでも存在していらっしゃるが、そういう観音様だって中性だ」。いやはや、世の中は大きく変わりました。

話しが脱線してしまった。のび太君と僕は、指を口にくわえながら、他人様の消費行動に熱い視線を送るのでした。





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