どのくらい眠っていたのだろう。突然。機体が傾いた。僕は目を覚まし、隣にいる、ネズミ男君を見た。彼は、すでに目を覚ましていて驚く様子もない。「今、機体が方向チェンジしているんだ。だんだん、高度を下げていくぜ」という。なるほど、そうなのか?。僕、ジャイアンは、空ろな眼で窓の外を見た。相変わらず雲のジュータンだ。それでも、雲の種類が違ってきたのか?、前よりは薄くなり、隙間から下界がぼんやりと見えているような?。「見てみんしゃい。田んぼの輪郭とか家とか、道路が見えるやろ?」と、ネズミ男君は、いかにも視力抜群と言いたげだ。。「そう言えばそうかなあーーー」。本来、近視の僕には定かには見えない。まああ、そういうことにしておこう。後の三人は知らぬ存ぜずで、相変わらず、船を漕いでいる。

僕は時計を見た。3時間以上は飛んでいるようだ。着陸も近い。しばらくして、「まもなく着陸態勢に入ります。倒した座席を元に戻してください。シートベルトを装着ください」と機内アナウンスが流れた。皆、ばっちりと目を覚ました。いよいよかあーーーー。僕たちの心は躍った。

機体はすっかり雲を抜け、どんどん高度を下げ、田園風景を見せながら滑走路へと向かっている。「ありゃーーー」と思ったら、機体は滑走路を滑っていた。いつ着陸したのかわからないほど、なめらかな着陸だった。気の早いのび太君は、手荷物を降ろそうと、準備にかかろうとしていたとき、機内アナウンスが流れた。「ただいま、機体は着陸いたしましたが、予定時刻より15分早く到着しましたので、案内があるまでそのまま座席でお待ちください」とのこと。「ええええっ、そうなの」。僕たちは各々の時計を眺めながら苦笑い。僕は思ったことよ。「デートなら15分待たされても平気だが、何度も待たされるのはごめんだぜ」。出発が遅れた分を取り戻すべく、機長さんは、懸命に飛行機を漕いだのだろう。それにしても、待たされりゃ、元の木阿弥だ。

ここまで来たからには背に腹はかえられない。「じっと、我慢の子」で待つことにした。あたかも、飢えた犬がご主人様から「待て」と言われている心境だ。僕たちは「今や遅し」と待った。程なくして、「ドアは開かれました」というアナウンスが。僕たちは、「それ行けワンワン」で、先を急ごうとした。そのとき、大きな黒い手が僕たちの行く手を妨げた。な、な、なんと、リーダー、ドラえもん君が仁王立ちして通路をふさいだ。前の席の人たちを先に下ろしてやろうという、リーダーの計らいだ。さすがはリーダー。伊達で、リーダーをやっているわけではない。見直したぜ。ようやく僕たちの出番となった。降り口ではスタッフたちが見送っていた。二人の美しいキャビン・アテンダントがにっこり、ほほえんでいた。僕たちも二人の顔を交互にみやり、「にんまり」と笑みを。いよいよ異国の地の扉が開いたのだ。

僕たちはよろけるような足取りで、出口を目指した。入国審査のため、再び白線上にならんだ。僕の順番がやってきた。女性の審査官だ。僕は例によって「にこっ」と笑うと、審査官も「くすくす」と笑いながら、パスポートにポンと押印した。ホップ、ステップと足取り軽く、皆の待つロビーへと赴いた。すでに、現地案内人が待機していた。五人が揃ったが、案内人が動く気配がない。「ワイ?なぜ?」と尋ねると、今回のツアーは総勢23名とのこと。「揃うまで待ってください」と言う。「ええーーーつ、そうなの」と思って待っていると、仲間たちが集まりだした。

よく見ると男がほとんどいない。我々五人と、あと二人が男だった。ということは18名が女性だ。さらに観察すると、訳ありオークションではないが、それぞれに、思惑をかかえた女性たちばかりのようだ。それもそうだろう。それ以上に驚いたことは、ほとんどが中高年のおばさんたち。(これは失礼)。まああ、類は類を呼ぶで、おばさんたちも「じじいばっかりね。いい男は一人もいないわーーー」と、思っているかもしれない。

いずれにせよ、数日を共にする仲間ができたわけだ。僕に二句、浮かんだ。「うば桜、ともに動けば、よき友か」「うば桜、やかましいこと、限りなし」。いやはや、これからどんな珍道中が待っているのだろう。まだ読めない。


コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

この日記について

日記内を検索