「鉄は熱いうちに打て」という。僕の記憶も時の経過と共に薄れていく。と言うことは、先を急がねばなるまい。ホテルへ戻った。まだレストランでの、はちゃめちゃな行動の余韻が残っている。頭が混乱し、「どーーつ」と疲れも出てきた。「よしーー、マッサージにでも行くか?」とジャイアンが提案すると、のびた君とネズミ男君が「はい」と手を上げた。リーダーのドラえもん君と夜泣き爺さんは疲れていたと見えて、そく、部屋へ戻ったよし。まずは長老の介護が先決と言うことだろう。

ホテルのフロントマンに、店を紹介してもらった。値段を聞くと意外と高い。ぼられている可能性もある。ここで、のび太君が「一、抜うーーーけた」と降板した。さすが貴公子、のび太君。君子危うきに近寄らずか?。不本意ではあったが、ネズミ男君とジャイアンの二人が行くことになった。タクシーに揺られて、ほぼ5分。とある店の前で車は止まった。

僕たちは、やや不安だったが、背に腹はかえられない。導かれるまま、階段をを「トントン」と上り、二階の部屋へ案内された。長方形の部屋にマッサージベッドが10個近く並んでいた。ベッドとベッドの境に、ついたてが施してあった。二人の女性揉み手が待機していた。一人はふくよかな女性。もう一人は小柄でスリムな女性だった。ネズミ男君が「ふくよか」、ジャイアンが「スリム」に当たった。

彼女らが、ジェスチャーで服を脱ぐよう促す。僕たちはロッカーへ一枚、一枚と、おそるおそる脱いでいった。最後の一枚になったとき、何を勘違いしたか、ネズミ男君はカラフルなパンツを脱ごうとした。「オーノー」と言って、ふくよか女性が、パンツを押さえてそれを制した。ジャイアン大いに笑う。

僕たちは隣同士のベッドにうつぶせに寝かされ、香の強いオイルを「べたべた」と背中と足に塗られた。その後が傑作だ。「ぺったん、ぺったん」と、まるで、お餅をつくがごとく、小気味よい音がし始めた。壺を押さえて、凝りをもみほぐす手の動きはない。ほとんどたたいている。こちらが、「パパパンパン、パパパンパン」とやり出すと、隣からも「パパパンパン、パパパンパン、パパパンパン」と同じ音が。あたかも、暗黙の了解で、二人して音楽を奏でているような。これが手なのかもしれない。僕たちはまるで、魔法にかかったかのように睡魔に襲われた。何時がたったのだろう。やけに大きな「パン、パン」という音が聞こえた。「痛いっ」と思い、目を覚ますと、「はい、おしまい」とのこと。ネズミ男君とほぼ同時に終了した。これは夢か幻か?と、僕たちは、空ろ眼で着替た。外へ出るとタクシーが待っていた。

僕たちは無言のまま、ホテルへ帰還。部屋ではのび太くんが、免税店で購入していた焼酎を、「ちびり、ちびり」とやっていた。開口一番、「どうやった?」と聞く。とても話せる代物ではない。僕たちは「よかったよ」と言って、口を濁し焼酎につきあった。よもや話で場を繕い、小一時間ほどで、ベッドインタイムとなった。「パパパン、マッサージ」の奇妙な印象がまだ頭にこびりついている。僕、ジャイアンはいつの間にか眠りに落ちたようだ。

朝は結構早く目が覚めた。のび太君はまだ就寝中。その隣を見ると、ネズミ男君がベッドの上に座っていた。「どうしたの?」と聞くと、ジャイアンのいびきがうるさくて、眠れなかったとのこと。なんでも、ジャイアンのいびきは「グオーー、グオー、むにゃむにゃ、、ムニャムニャ」、しばらく音がやんで、また、「グオーー、グオー、むにゃむにゃ」と、訳のわからぬ事をつぶやいていたらしい。「パパパン」というマッサージの音がたたったのか?。定かではない。記憶にござんせん。ネズミ男君には気の毒なことをしたと、ひたすら謝れど、時、すでに遅しだ。だが、しかし、バット、翌日の夜に、ネズミ男君から、手痛い仕返しを受けるとは、このとき夢にも思わじ。

貴公子、のび太君は「知らぬ、存ぜず」で、一切無表情、無頓着だ。思うに、別室の、夜泣き爺さんも、一晩中、ドラえもん君のいびきに悩まされ、泣き続けていたに違いない。長老はそのことを一言も言わなかったが・・・・。






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