一気に書き続けよう。一ヶ月以上、時が経過すると僕の記憶も定かでなくなる。僕たちを乗せた船が島の入り江に停泊した。すでに、別の海賊船、いや、観光船が停泊しており、外国人が多数乗り降りしていた。船を下り、海と山の境に舗装を施した道を案内人の先導のもと、てくてくと歩く。しばらく歩くと、上り坂となった。ここには舗装はなく、足を乗せてもいいような石が点在しているだけだ。山登りを趣味としているネズミ男君は、すいすいと上っていく。案内人さんから、「一人で行動しないように」と注意され、不満そうに帽子をかぶり直した。

しばらく上ると、洞窟の入り口に到着した。さあ、いよいよ探険の始まりだ。鍾乳洞は多々あれど、海に浮かぶ島の鍾乳洞は初めての経験。おそるおそる案内人の後に従った。洞窟の壁は、あたかも母親の乳房が垂れ下がったような乳白色を呈し、またある部分は赤茶けたまだら文様が一面に広がっている。このアンバランスな色彩は、まさに自然のなせる技、驚異と言っていいだろう。

僕たちは薄暗い洞窟を順路に従って進んだ。いろんな角度から見ると、人面や観音様が座っているように見える場所もあり、なるほど、仏教国を意識してのプロパガンダ的要素もあるかのように感じた。たとえそうであれ、今、我々は海に浮かぶ小島の中にいる。島がこのまま空を飛べば、宇宙船の中にいるのと同じだ。「さらば地球よ・・・」、そんな変なことを感じながら数十分の鍾乳洞探検は終わった。

洞窟を出ると、今度は下り坂だ。滑らないように注意しながら下っていった。中間を過ぎた頃、土産品店があった。なるほど、さすがに観光地だ。いろんな小物類が売られていたが、既に船の中で購入済み。横目で流しながら更に下った。下り終えると、コンクリートの道と眼前に海が広がっていた。岸壁には新たに到着したらしい数隻の船が見えた。外国人客とすれ違った。不思議と顔を見合わせることがない。「知らない人には注意せよ」ということか?。というより、得体の知れない、がに股の田舎風男達に、脅威を感じていたのかもしれない。

下船した場所まで到着した。歩道と船の乗り口に至るまで、段差の大きい箇所があった。そこで、ジャイアンは何を思ったのか、後ろからやってくる、おばん諸氏のために段差の下で待機し、降りる一人一人の為に、手を差し出した。おばん諸氏はいやがる様子もなく、僕の手を握りしめ無事に乗船。この辺が、スタンドプレーに猛るジャイアンの優しさというところか?。この光景を見ていた、ネズミ男君が、「あんた、女性の手を握りたかったんじゃないの」と言う。当たらずといえども遠からじだ。ただ、いかに好色のジャイアントいえども、おばん諸氏に対して、やましい気持ちはさらさらない。

3時間程度の船旅は終わった。再び船に揺られて、帰途に就いた。僕たちは二階の展望台に上がり、写真撮影に臨んだ。ジャイアンの、「お手握り作戦」が功を奏したか、おばん諸氏達と仲良く記念撮影だ。「にっこり笑って、はい、チーズ」。おばん諸氏も、日本での色んなしがらみから解放されたのか、眉間のしわもなく、きれいな顔をしていた。開放感は、かくまで人を変えるのかと痛感。もち、我々も同様だ。

さああ、旅も佳境を過ぎた。今宵の日程は、現地の料理を食べて、ナイトマーケットを散策することになっている。ナイトマーケットか?。「パンパカパン、マッサージ」以外にまだ、夜の町を探索していなかった。皆、アオザイを着た美しい女性との遭遇を頭に描いているようだ。にやにや顔が妙にひっかかった。もちろん、ジャイアンの僕もその例外ではないが・・・。まずは二日目のホテルへ着くことが先決だ。

例によって、五つ星のお嬢さん二人を高級ホテルの前で下ろし、我々はその近くにあるらしいスタンダード・ホテルへ直行だ。最初に泊まったホテルよりはきれいで、状態も良さそうに見えた。ここなら、水が天井まで飛び出すことはないだろう。確かにその通りだった。こぎれいな部屋に荷物を置き、迎えのバスがくるまで部屋で待機した。今宵はいかなる夜になることやら?。皆の心は躍っていた。




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