フランス料理を食べながらの雑談もなかなか味がある。「初めての経験」ってやつだ。僕たちは慣れない手つきでフォークやナイフを操りながら出された料理をついばんだ。小さな四角いパンにバターを塗り、口に運んだ。うんんん、なかなか旨い。今宵が現地での最後の食事かと思えば感慨もひとしおだ。食事の光景をデジカメに収めておこうと、ジャイアンはカメラに手を伸ばした。その時だ。こともあろうに、ビールのグラスに触れ、貴重な液体をこぼしてしまった。「しまった」と思ったが後の祭り。ジーパンがびしょびしょだ。「まああ、これも愛嬌だぜ」とジャイアンは苦笑い。ここで一句だ。

     旅に酔い、ビールまでもが、寂しそう。


和やかな内に最後の食事が終わった。最後の行程は飛行場へ連行されることのみである。我々は重い足取りでバスに乗り込んだ。数名の者がもう一泊することになっている。彼らをホテルまで送り届けた。「別れる事はつらいのねえーーー」という歌があったが、まさに今そのときだ。バスに残った者は皆、窓越しに手を振った。奇妙な連帯感を生み出す一瞬。「こういう事は、頻繁には遭遇したくないあーー」と思う。なんとなれば、涙がいくらあっても足りないからだ。とはいえ、涙の在庫量はそれほど、多くはないが-。

僕たちは無言のまま、バスに揺られて帰途への道をまっしぐらだ。時折、ネオンの光が窓を照らす。さすがにバイクの通行量も少なくなった。時計を見た。夜の9時。と言うことは日本時間で11時。どこかのスナックで、下手な歌をおらんでいる時間帯。もう既に心は日本か?

飛行場に着いた。荷物を引きずりながら、案内人の後ろに従った。1階のロビーでは荷物検査をやっているようだ。リーダー、ドラえもん君は、「ここは俺の出番」とばかり、仕切られているロープの合間をくぐって、検査カウンターの様子を調べに行った。あわてずとも、案内人の指示に従っていれば良いと思ったが、意外や意外、ロビーは混雑していた。そういうこともあり、ドラえもん君は、「竹コプター」に乗った気分で、行動を取ったのだろう。

程なくして、ドラえもん君が戻ってきた。「○○番の番号の所に並べばいいよ」と言い、我々を引率し、彼が先頭に並んだ。荷物検査の係員は若い現地の女性。かなりの美人だ。言葉が通じなく、ジェスチャーで、「ここへ 荷物を置きなさい」と指を差し出す。重さを量っているのだろうか?。体重計の親分のような台があり、そこへ荷物を載せるわけだ。

ドラえもん君はすべてを理解していたらしく、係員が指示する前に、荷物を台に乗せた。それがいけなかったのだろう、係員の心証を害したようだ。見事、はねのけられた。「駄目」と首を横に振った。彼は、しぶしぶ最後尾へ・・・。

僕たちは早く済ませたい一心でおとなしく並んでいた。ジャイアンの番がやってきた。例によって、「にこっつ」と笑ってみたが反応なし。ただ、クールな目がオッケーのサインを出していた。やれやれだぜ。滞りなく、4人の検査が済んだ。僕たちは入場口付近で。まだやってこないドラえもん君を待った。「待てど暮らせど、こぬ人よ」と、僕、ジャイアンが様子を見に行くと、やっと、最後の1人、ドラえもん君が検査に及んでいる所だった。何故に、かかる事態が生じたのか分からない。言葉が通じないことが、一つの要因だろう、と、同時に、これはひいき目の考えだが、ドラえもん君の凛凛しい姿に係員が、ぞっこん惚れてしまった。「あなた!、離さないわよ」と言うことか?。うんんん、これはあり得ないなあーーー?。

とりあえず、2階へ上がり、待合室で搭乗時間まで待機することになった。ここで、案内人とお別れだ。数日を共にした案内人へ、懇ろな感謝の弁を述べて、幾ばくかの「ドン」の残金をお礼として手渡した。おばん諸氏には別の案内人がいたようだ。

2階へ上がると、椅子を取り囲むように、売店が軒を並べている。僕たちはやっと空いていた椅子に陣取った。と、そこへ数人のおばん諸氏がやってきて、荷物を預け、買い物に出かけた。うんん、女は強しだ。飽くなき執念。僕たちはなすすべもなく、椅子に腰掛けて、出発時間を待った。時計は現地時間午後11時。出発時間は午前2時。まだ3時間もある。「待つのはもうこりごりだぜ」と思えど仕方がない。999のメーテルを待つのなら、無制限一本勝負で待つのだが・・・・・。


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