僕たち約半数のメンバーが釧路湿原へ向かうことになった。残った者達は、現地で町を散策という趣向だ。釧路湿原かあ・・・・、湿原といえば丹頂鶴。のび太君もネズミ男君もカメラを首からぶら下げて、期待に胸を膨らませている。反面、僕、ジャイアンは淡々としたもの。

一時間ちょっとで、現地へ到着。木製のすかし塀が延々と施してあり、その中に鶴がいると言うのだ。僕たちは塀に沿って小道を歩いた。塀の隙間から中をのぞいた。いた。いた。確かに鶴が。頭が赤い。スマートな二本足で立っていた。あたかも縄張りを持っているがごとく、いや、実際、縄張りがあるのだ。我がテリトリーを確保して、そこに飛来するのだろう。残念ながら、空を舞っている丹頂の姿はとらえられなかったが、塀の内側には、まさに、天女を彷彿とさせるような美しい鶴たちが・・・。あの鶴がすらりと伸びた美脚の乙女だったら、僕はたちまち虜になっていただろう。

「お嫁に欲しい・・・・」。おっと、これはネズミ男君が言うべき言葉だ。ただ、如何せん。姿は美しくとも、心までは見えない。「鶴の恩がえし」ではないが、そんな心優しき鶴かどうかは、皆目分からない。

のび太君は塀の隙間から、高級なカメラで窮屈そうに撮影していた。僕とネズミ男君は、先へ先へと歩みを進める。いつもの癖だ。我一番乗りと、それを自慢したいのだろう。はかない人生の嵯峨だ。それはそうと、僕も時折、携帯のカメラで、パチパチとシャッターを切った。今ひとつ、さえない。

と、そんな折、一台の車がやってきた。なんでも餌やりの時間らしい。良いタイミングに出くわした。おじさんらしき人が、塀の鍵を開き、ツルたちに小魚のようなものを与えた。何と、鶴たちは、その小魚を口にくわえ、湿原に点在する小さな水辺で器用に洗って、口にほおばった。これにはちょっと驚いた。手当たり次第、食らいつくのかと思ったが、さにあらず。丹頂鶴の上品さが伺われた。

湿原の中は相当にに広いのだろうが、僕たちはほんの一部を見ただけ。それでも、自然の営みを垣間見れたことは幸いだ。のび太君は真剣に丹頂を撮影した由。写真が楽しみである。
 
    丹頂は 梅にも負けじ、気高きか。(字余り)

小一時間ばかりいて、僕たちは再びホテルへ引き返した。あたりはもう薄暗くなっていた。ホテルの部屋へ直行した。小ぎれいな畳の部屋、ここが、旅の最後のねぐらだ。寂しくもあり嬉しくもあり。いびきからの解放と、南国の故郷が待っている。

僕たちは「まず、風呂だあーー」と言うことで、例によって三人連れ立って向かった。それはそうと、旅で何回、風呂に浸かったのだろう?。朝晩一回ずつとして、六回目になるか?。温泉地への旅とはそんなものだろう。例によって、僕はカエルの行水で着替えを済ませた。待つこと数分。のぼせたような顔で、のび太君とネズミ男君があがってきた。僕たちはそのまま宴会場へとくりだした。

畳敷きの大広間に小刻みに配置されたテーブルの一つ一つに会席料理が施してあった。もち、僕たちは三人用のテーブルへ。椅子に座って食べる食事は足が疲れなくて良い。少々違和感があるが・・・・。何となれば、畳なら、ざ布団に座り隣近所と差しつ差されつで、酒も弾み、もっと和やかになるはずなんだが、こういうテーブルでは、妙にかしこまってしまう。これは仕方がないか?。見ず知らずの他人と、食事を摂るのは、レストランや食堂と同じ感覚だ。要するに、必要以上に他人に干渉するなという配慮だろう。喧嘩になることもあるやも知れぬ。

僕たちは例外だ。最後の夜とあらば、大いに盛り上げなくちゃあーーと、ビールと焼酎でとぐろを巻いた。添乗員さんも飲みたいようだったが、今宵はそうも行かないらしい。最後の夜が一番緊張する日だろう。終わりよければ全て良しだ。料理は特に変哲もなし。おいしかったと言うべきか。一万円の特別料理組にはかなわないが・・・・・・。

最後の夜だ。食事の後、外へ出てみようと言うことになった。なんでも、アイヌ民族のショーがあるらしい。僕たちは部屋へ戻り、浴衣を外出着に着替えて出かけた。ホテルの外は寒かった。おまけに小雨が降っている。ホテルの50メートルくらい先に、「アイヌの民族ショー」という看板が掲げてあった。一路そこを目指す。途中、男と愛人かと勘違いした夫婦ずれと出会った。目的地は一緒だった。一言、二言話しながら歩いた。

歴史を思わせるような古びた小屋みたいな所へ着いた。ホテルで買っていた割引チケットを差し出し中へ入った、薄暗い部屋に100名程度は座れそうな椅子が施してあり、中央には舞台があった。観客は三分の一程度。僕たちは前の方に陣取った。今や遅しと開演を待った。のび太君とネズミ男君がカメラを持参したことは言うまでもない。




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