平家の里を後にし、吊り橋を車内から見た。うっそうとした森の中に、雨に打たれ、いまにも、壊れそうな吊り橋がゆらゆらと揺れていた。天気が良くても僕には到底渡れそうにない。他にも見学できそうな所があったが、皆、「もうごちそうさん」といった感じで、早くホテルへ帰りたいそぶり。長老は無言のまま、事の成り行きを見守っている。さすが、人生を達観した人ある。

再び、幾多のS字カーブを器用に運転しながら、車は山道を下っていく。時折、道にはみ出した木の枝がフロントガラスに接触する。僕たちは、「わおーーーつ」と奇声をあげる。

おっと、初めての対向車だ。地元の人らしいおじさんが乗っていた。小型車だが当然、離合できない。かかる場合は登り優先か?。バスは、道幅がひろくなっている所までバックだ。いやああ、これが怖いのなんのって。一歩間違えば、谷底へ転落だ。皆、無言のまま、運転手のドライバーテクニックを見守った。数メートルバックして、何とか離合できた。ほっと、胸をなで下ろす。

雨は相変わらず強く降っている。ときどき、山の上方から、滝となって山道に水がこぼれ落ちてくる。これまた恐怖心をあおる。「あああつ、仏様、神様、山が崩れませんように」と、僕たちは念じながら、一時も早いホテルへの到着を願った。ホテルまでは2時間ちょっとかかるようだ。後は、運を天に任せるだけだ。

やっと、車が秘境の地から離れ、広い道に出た。車内に安堵感が漂う。皆、冷蔵庫にあるお茶を「ぐいっつ」と飲み込んだ。

時々思う。世界をはじめ、日本列島の各地に秘境の地と呼ばれる所は多々あると思うが、何処へ行っても、舗装され、ガードレールが施されている。人手が入り、観光地化されているところが多い。まあ、これも善し悪しだ。行くのに便利になったが、そのままの自然が損なわれてしまう。これは仕方の無いことか?。

最年少の仲間が言う。「僕はこういう所には三日も住めないなあーーー」と。
同感だ。美しい雪女との二人暮らしなら、考えてみないこともないが、、、。あり得ない。あり得ない。やはり、ネオン街を求めて、さまよっている方が性に合っているか?。



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