旅一日目の夜。のび太君は則、寝に落ちたようだ。ねずみ男君と僕、ジャイアンは、寝付かれず悶々としていたが、しばらくすると始まった。「グオーッ、グオーツ。フーーー。ムニャムニャ」と、得体のしれない音が。「やられた」と思ったが既に遅し。棒、ジャイアンは、それからひとしきり物思いにふけることによって、その害を追い払った。

旅、旅とは人生だ。旅に出て色んな人たちの人生を垣間見る。我が人生と照らし合わせて深く共鳴する。喜び。涙、出会い、別れ。数え切れない人たちとの遭遇。その全てが人生なのだ。異境の地から故郷に思いが及び。亡父、老いた母、兄弟、家族・・・・・。今を生きている、いや、生かされている自分を幸せに思う。乾杯ーーーー。とかなんとか思っているうちに、僕の意識も朦朧となり、後は存ぜず知らずだ。

朝、五時半に目が覚めた。後の二人も目が覚めているようだ。さあ、今日が旅、二日目のスタート。身支度をした。まずは六時半から朝食だ。隣室の二人はまだ船を漕いでいる由。三人で二階の食堂へ向かった。定番のバイキング方式。まだ空いていた。料理コーナーへ赴いたが、「あれっつ、お盆がないぜ」と、ねずみ男君が言う。確かにそうだ。大中小の皿だけがあった。田舎者の僕たちは、お盆に皿をのせて、テーブルに運ぶ習慣がある。

僕、ジャイアンが、ねずみ男君へ言ってやった。「あんた、ネズミだから盆までかじっちゃうから、置いてないんだよ」と。「それもそうだぜーー」と、彼は変に感心。ただ、皿を持って、料理をのせ、一度テーブルに戻る。それを何度も繰り返すのは面倒だ。料理の見張り番みたいな人が「じーっ」と観察している。僕たちは何度も席を立つので、「あいつらは良く食う客だ」と思われたに違いない。

料理にちょっと、塩気が足りない。のび太君が女給さんを手招きして、「胡椒か塩はないかなあーーー」と聞いた。彼女は変な顔をして笑ったが通じない。そこで、僕、ジャイアンの出番だ。「salt. salt. do you understand?」と、流暢な英語で話すと、「オー・マイー・ゴッド」。やはり通じない。彼女は、上司に聞きに行って、ようやく塩らしき物がやってきた。「わおーっ」、確かに塩。皆、適当にふりかけ、「いただきまーーーす」だ。僕、ジャイアンは、おかゆに卵を落とし、二杯食べたっけ。オレンジジュースを飲み、最後はコーヒーで締めくくった。もち、その間、皿を運ぶこと数回。

朝食が終わり、集合時間まで部屋でくつろぐことになった。僕たちはめいめい、今日の旅立ちの為に、念入りに化粧だ。皆、風前の灯火となった頭髪を、風になびかないように、かき上げた。また、一日で伸びた、権兵衛さんや熊五郎さんみたいに、口の周りにはびこった粗ひげを、「つーつらつー」に剃りあげた。かくして美男子三人が誕生した。どこに出ても恥ずかしくないだろう。

隣室の変人、二人はどうしているのか皆目、分からない。朝食を食べて集合時間に間に合えば良いのだが・・・。なにせ、長靴おじさんと、タオルおじさんは単独行動が多い。人畜無害だから放し飼いにしていた方が良い。

いよいよ集合時間が迫った。我々は旧館フロアーにエレベーターで降りた。新館とつながった通路を行こうかと思ったが、例の、肝っ玉姉さんに遭遇するのが怖くて、そっと、旧館フロアーから外に出て、新館正面へ赴いた。

さあ、二日目の旅が始まる。今日は遠方の町まで行くらしい。期待とと不安が脳裏をめぐった。

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