とっちゃん坊や5人衆の旅(3)  
 「今日も行こうぜ。ゴー、ゴー」。ねずみ男君の言葉ではないが、僕も先を急ごう。記憶が定かでなくなるからだ。

おっと、そうそう、忘れていた。荷物検査の後に、パスポート検査があった。いわゆる人物検査だ。一人、一人、検査官の前に進み、パスポートを提示する。検査官は「じろっ」と、本人の顔に一瞥を投げ、パスポートの写真とチェックする。僕達、とっちゃん坊や達は4人が、「はげちゃびん」だったので、驚いたことだろう。おまけに、「にこっ」と笑われると、検察官も気持ち悪かっただろう。のび太君だけが風前の灯火となった髪を残存していた。年数がたつと顔も変形し、よく見ないと、判別がつかない。その点、はげちゃびんには髪型がないから判別もしやすい。滞りなくみんな即時、釈放だ。

僕たちは「マイ・チェアー」を目指して機内を進んだ。34番F席。最後尾に近いセンターの右から2番目。席としては、あまり良くない。「人相の悪い輩は、後方に押しやられるのかなあー」と、僕、ジャイアンが言うと、ドラえもん君が、「後方が安全なんだよ」と、フォローした。真偽はよく分からないが、ごもっともです。

とっちゃん坊や達は、A・ B から始まり、CがなくD・E・Fと横一列に並んだ。急にドラえもん君が「席を替わって欲しい」という。要するに体がでっかいから、通路側に座りたかったのだろう。皆、快く了承し、僕、ジャイアンはA席、のび太君の隣、B席となり、Dがドラえもん君、Eに、夜泣き爺さん、Fが、ネズミ男君になった。幸いなことにGは、空席だった。

30分程度遅れ、機は飛び立った。「さらば母国よーーーー」。機内は満席に近かった。早朝からの出立だったので皆、疲れていたようだ。いつしか、「こっくり、こっくり」と。どれくらいの時間がたったのか、キャビンクルーのお姉様達が、飲み物を運んできた。ジャイアンは、うつろな目で、背の高いクルーのお姉様の美しい顔を眺めながら、ジュースを所望。のび太君は、まだ治癒していないらしい「ぜんそく」の薬を飲むため、水を所望。他の者は、それぞれ何かを頼んでいたようだ。

僕たちは再び睡魔に襲われた。しばらくすると、「カラン・コロン、カラン・コロン」と、四谷怪談の下駄の音にも似た、荷車がやってきて、機内食の時間と相成った。「チキン、オア、ソバ」と聞くので、「えええつ、ソバがあるの?」と、僕たちは一瞬たじろぎ、「ソバ」に決定。盆に乗った幕内弁当みたいな物が手渡された。中を見ると、丸いパン1個と、バター。封印してあるライス。野菜に果物、お菓子といったメニューだ。「ソバ」ほ、どこ?どこ?と、封印されたライスのふたを開くと、長いソバは見当たらない。要するに、ソバを混ぜ込んだ、ソバライスだったわけだ。まあ、鶏飯よりはましか?。きれいに平らげた。食事後の飲み物はコーヒーに決定。

食事の後は、前席の背に設置されているアンドロイドのような画面を指タッチしながら、映画鑑賞だ。イヤホンで音声を聞いたが今ひとつ。何を言っているのか良く聞き取れなかった。映画鑑賞をやめて、刻一刻と変化するフライトの様子を眺めた。「もうすぐだぜ」と、のび太君が言った。画面は、まもなく到着する航跡を描いていた。時計の針はやがて2時間半になろうかという痕跡を刻んでいた。

いよいよ中継点、台北に到着だ。車輪が滑走路に届いた。ガタゴトガタゴトと音がし、機体が揺れた。ねずみ男君が「わおーーーーつ」と叫んだ。気の弱いジャイアンは、のび太君の袖につかまった。ドラえもん君は腕組みをしながら瞑想にふけっているよし。夜泣き爺さんは、まだ夜ではないので、泣いている様子はない。平然としていた。道のりはまだ長い。元気でゴー・ゴーだ。










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