僕たちは20名は乗れそうなマイクロバスに乗車した。運転席の真後ろに、ネズミ男君、真ん中に、のび太くん。左端にジャイアンの3名が座った。前方が見渡せて一番良い席だ。我々の後ろに、ドラえもん君と、夜泣き爺さんの二人。同行者の5人は、後部座席に陣取った。いくら親しくなったとはいえ、まだ「おい、おまえ、あんた、○○ちゃん」とは言えない。グループは自ずから、固まりやすいものだ。

さてと、我々10名を乗せたマイクロバスは、まず、アユタヤという歴史の町まで行くらしい。高速で1時間半。正直、「乗り物は、もうごめん」と言いたいが、そういう訳にもいかない。日本では真っ暗だが、現地はまだ明るい。車窓から外を見た。車が走り出すと、「わおーーーーつ」と、皆、びっくり仰天だ。車だらけ。渋滞がどこまでも続く。人はあまり見かけない、車が人みたいなものだ。車線が何車線とあり、ちょっと隙間ができると、右から、左から車が割り込んでくる。まさに一触即発の状態だ。さらに、その車の間隙を縫って二人乗りのバイクが縦横無尽に走り回る。「ネズミがちょろちょろしているみたいだ」と、ネズミ男君が自ら言葉を発した。「おおおーーつ、危ない」と何度、声をあげたことか。

途中から高速に乗り、田舎方面を目指して、車は走った。幾分、渋滞は緩和されたかに見えたが、それでも、幾度となく車線変更を繰り返しながら、抜いたり抜かれたりのチキンレースのごとく車は進んでいく。ドライバーのテクニックもさるものだ。「僕たちは、この地では到底、運転できないなあーー」と、のび太くんが言う。いかにも、しかりだ。

緊張感の為か、時間のたつのを忘れ、車窓に釘付けだ。予定通り、アユタヤの町に入った。どこに町があるのかと思うくらい、何にもない。人さえいない。それもそうだろう。あちこちに無数の寺院があるだけなら、静かなのもうなずける。現地係員が「まず、ホテルへチェックインします。ここでは一番良いホテルです」という。過去、ホテルには随分、泣かされてきたので、現場係員の説明を、言葉通りには信じられなかった。

ホテルに到着した。いやあああ、外見はなかなかのものだ。とっちゃん坊や達5人には、5階の二部屋があてがわれた。ドラえもん君と夜泣き爺さんがペアとなり、後の3人が一緒の部屋だ。過去のほとんどが、このパターンである。三人一緒となれば、いつもベッド争奪戦が始まる。本来、二つしか置かれていないベッドに、急遽、「お子ちゃま用」と言って相応しい小さなベッドが、右端にあしらわれていた。問題は誰がそこへ寝るかだ。

第一夜目。特に案ずることもなかった。ネズミ男君が率先して「おいらが、お子ちゃま用に寝るよ」という。決まりだ。のび太君を真ん中に、僕、ジャイアンが左端だ。要は、いびき公害をいかに排除するかだ。ネズミ男君はジャイアンから、極力、離れた場所に陣取りたかったのだろう。それは、ジャイアントとて同様だ。

ひとしきり、荷物を整理し、1階のロビーに降りた。今宵の日程は、ライトアップされた遺跡の見学とタイ料理の夕食だ。10名そろったところで、バスは薄暗くなった町を走った。のび太君、ネズミ男君、それに僕、ジャイアンは首からカメラをぶら下げて、芸術的作品を撮ろうと、シャッターの機をうかがっていた、




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