とっちゃん坊や5人衆の旅(9)  
午前8時半にホテルロビーに集合した。5人ずれの同行者たちも元気な顔を見せていた。なんでも、3人の女性達は海外旅行が初めてらしく、気もそぞろと言った様子。現地係員の手引きで、車に乗り込んだ。席は昨日と同様。のび太君、ネズミ男君、ジャイアンが一番良い席を占拠。誰も、不平不満を言わないので、僕たちは甘えた。現地係員が、「今日はアユタヤの遺跡観光巡りと象乗りを体験をします」という。

まず、僕たちは「ワット」と称する寺院の遺跡をあちこち見て回った。広大な敷地の中に廃墟と化した仏塔や、首がなく胴体だけが残っている無残な仏像。戦争で仏像の首だけが持ち去られたらしい。他にも寝釈迦仏や巨大な木の根に挟まれた仏像の顔など、見るに忍びない光景も多々あった。

タイは小乗の仏教国であり、その90パーセント以上が仏教徒だ。男性は一生に一度は必ず出家しなければならないという。尼僧さんはいないようだ。信仰は厚く、朝夕にお参りする敬虔な人が多いと聞く。日本人も仏教人として見習うべき点も多々ありそうだ。ただ、昨今の経済成長には目を見張るものがあり、結構なことだが、大気汚染の問題、道路等のインフラ整備等、課題はたくさんあるようだ。

戦争がもたらした遺跡は今や、世界遺産として保護されているが、有史以来、人間が行ってきた行為は残虐そのものだ。僕たちはどんな顔で遺跡と対峙したらいいのだろうか?。ただ一つ言えることは、愚かな戦争は繰り返してはならないと言うことだ。そのための警鐘として遺跡をとらえたら、見る価値があるというもの。日本の京都、奈良、国内に散在するお城。そのどれに対しても、単なる観光地としてではなく、人々の血と涙の結晶が今を支えていると言うことを、努々忘れてはいけないだろう。

他のメンバーも、おそらくそう思ったに違いない。話が暗くなった。車は遺跡群を離れ、象の体験試乗の場へやってきた。「象かあーーー。お先にぞうぞ」と、珍しく、夜泣き爺さんが、だじゃれを述べた。いやああ、見るからにでっかい。のび太君は4頭並んでいる象の尻をカメラに納めた。お見事。

僕たちは二人ずつ、象の背中に設けられたボックスに座った。のび太君と僕、ジャイアンがペアを組み。ドラえもん君とネズミ男君が一緒になった。ドラえもん君とジャイアンが組めば、「重いぞう」ということなり、「ぞうも済みません」と謝らねばならない。苦肉の選択だ。夜泣き爺さんが象に乗ったかどうかは定かではない。自分のことで精一杯だからだ。

同行の女の子達も、にっこり笑顔でVサインを送っていた。いやああ、男より女の方が度胸があるぜ。僕たちは10分程度、象の背に乗り、近くを往来した。眺めは抜群。やや、余裕ができて、カメラで他の試乗者達を撮影した。象使いの仲間かどうか知らないが、カメラで僕たちを撮影してくれるという。喜んで依頼した。撮影が終わったとき、マンホールを小さくしたような像のでっかい鼻が、のび太君のヒザに伸びてきて、ヒザをなで回し始めた。「わおーーつ、怖い」と、のび太君はのけぞった。「何事だろう?」と、聞くと、「チップをくれ」との催促だった。じっとりと湿った象の鼻に、のび太君は、おそるおそる20バーツの紙幣を入れた。象は紙幣をしっかとくわえて、象使いに渡した。うまく飼い慣らしたものだ。。

次は僕の番だ。長い鼻が近寄ってきた。僕はポシェットから財布を取り出し、20バーツを鼻に入れようとした。気持ち悪く、早く紙幣を渡そうと、慌てたため、思わず紙幣を地面に落としてしまった。なんと、象は地面の紙幣を鼻で拾い、象使いに渡すではないか。「象もさる者、ひっかく者だ」。恐怖の象試乗体験はこれにて終了。僕たちは「ほんわか、ほんわか」と酒に酔った気分。良い体験ができた。

さ、いよいよ、アユタヤを後にする。さらばアユタヤよ。象さんよ。車は一路バンコクを目指した。







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