秋、秋、秋も深まった。娑婆の人々は何をする人ぞ?。やはり秋と言えば読書か?。僕は最近、読書をすることが、とんとない。というのも、読みたい本がないからだ。巷には、出版部数は少なくなったとは言え、諸々の本があふれている。ビジネス書をはじめ、婚活、就活やらの生活ジャンルの本。僕には必要のないものばかりだ。

子供時代を始め、昔はよく本を読んだ。特に探偵ものの本が好きだった。名探偵、明智小五郎、金田一耕助。シャーロックホームズ。彼らの名前を聞くだけで心が騒いだ。中学生の頃は、将来、「おれは探偵になるぞ」と豪語していた。人から「何になるか?」と問われた時、迷わず「探偵」と答えたものだ。

中学校の同級生に年賀状を出す時、僕は「小五郎」、相手には「中五郎」君と書いて出した。相手もいつからか、自分の事を「中五郎」と書いているから、気に入った名前は、知らずその人の愛称となる。今でも賀状は続いている。

ある日、学校で悪ふざけをしていた時、先生に叱られて職員室に立たされていた。もちろん涙は出さない。そのとき先生に言われた。「明智小五郎が、こんな悪さをするかい?」と。僕は無言のまま歯を食いしばって、じっと耐えた。

しばらく静かにはしていたが、相変わらず僕の探偵熱は冷めなかった。時が立った。時は人の心を変えるものだ。大学時代にはその熱もすっかり冷めた。探偵では飯を食うこともおぼつかない。父が教員だったので、周りは教員になることを勧めたが、父の苦労姿を見て、その道を避けた。

読書と言えば、探偵物以外では文学作品は結構、読んだ。夏目漱石、川端康成、芥川竜之介、志賀直哉、田山花袋。武者小路実篤、その他。外国作品では、ヘルマンヘッセ、ロマンロラン、トルストイ他。詩集も、ゲーテ、リルケ等を読んだ。

探偵になることをあきらめて、次に考えたのは詩人になろうと思った。特にゲーテの詩が、いたく僕の心をとらえたからだ。だが、これも断念。才能がないことを痛感。とりあえず、つたない僕の詩を一つ掲げておこう。
    
             旅
        君は旅が好きだろうか?
        頭に網代笠、ワラ草履をはいて
        手に鈴と応量器を持ち
        ひたすら世界を巡り
        愛を語ろう。

        疲れたら、ひとときの憩いを持とう。
        差し入れられた握り飯をほおばって
        荒れた御堂をねぐらにしよう。
        みなぎった僕の熱で
        冷え切った君の体をあっためよう。

        旅の果て、僕は死を迎えるだろう。
        細胞の一つ一つに思い出を残し、
        まだ閉じぬまぶたの中に
        しずくに宿る君の顔を見るだろう。
        愛と悲しみに満ち満ちた君の顔を。

いやああ、昔は僕も純情だった。愛こそが一番だと信じていた。今でもその気持ちは変わらないが、娑婆世界の垢にすっかりまみれてしまった。不器用に生きていた僕も、器用さを覚え社交辞令も、そこそこ言えるようになった。娑婆世界はその方が人間関係も円滑に運び生きやすい。かくして、「とっちゃん坊や」の僕が今いる。




コメント

hana
2013年12月23日15:37

umityanさん^^

お変わりなくお過ごしでしょうか?
今年も残り少なくなり何かと気ぜわしい日が続きますが
健康に留意されますように!

旅のお土産話をお待ちしています。

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