旅の二日目を迎えた。午前8時にバスが出発だ。とっちゃん坊や達は早めに支度を終えて、ロビーに降りた。フロントで精算を済ませ、バスに乗り込もうとすると、鼻ひげのお姉さんと、もう一人の仲居さんが、我々を見送りに来ていた。名残惜しそうに手を振る姿が、思わず涙を誘った。僕たちも窓から手を振った。お恐らく、二度とこのホテルに泊まることはないだろう。触れあいも縁。別れも縁なのだ。

バスは二日目の最初の行き先、「桂浜」を目指した。例によってガイドさんの流ちょうな解説が車内に響き渡った。桂浜にはもう随分前に社内旅行で来たことがあった。ネズミ男君も、そうだったようだ。なにせ、昔のこと。今とは随分違っていたかもしれない。

車に、どのくらい乗っていたのか定かではない。昨夜の睡眠不足が皆を眠りの世界へ誘ったようだ。「はい、そろそろ着きます」というガイドさんの声で目が覚めた。車をおりて、やや、坂になっている所を歩いた。坂を登り切り、前方を見ると、見えた。見えた。広い海原が。波は穏やかで真っ青に澄んでいた。

ガイドさんから注意事項の説明があった。「決して波打ち際までは行かないでください」と言う。看板にもそう書いてあった。波に足を取られて、沖へ流されないようにとの配慮だろう。

ネズミ男君とジャイアンは、決まった通路を歩き、一番先端にある展望台を目指した。距離は結構あった。ところで、のび太君とスネオ君の姿が見えなかった。砂浜の方へ目をこらすと、スネオ君は波打ち際の近くまで足を進め、しゃがみ込みながら何かを拾っている様子。のび太君も砂浜の中間あたりを歩いている姿が見えた。「よほど、砂浜が恋しいのか?。彼らは童心に戻って、はしゃいでいるのだろう」と、勝手に想像してしまった。実際は貝殻を拾っていたようだ。誰にあげるのか知らないが、ロマンティストだぜ。

ジャイアンと、ネズミ男君は展望台に上り、周囲を見回した。いやあああ、海も空もきれいだ。風景が見事に調和している。感動的だ。しばらく余韻に浸った。写真を撮ったことは言うまでもない。と、その時、ネズミ男君が時計をのぞき込み、「おやっ」と叫んだ。

何かと思ったら、バスの集合時間が迫っていたのだ。つい、長居をしてしまった。「さあーー、戻るべー」と、引き返した。途中から、ネズミ男君の足が急に速くなった。「おーーーーい、待てよ」と、ジャイアンが言っても、彼は振り向きもせずに、僕を置いていく。

僕、ジャイアンは思った事よ。「なんて、冷たい奴なんだ」ってね。後で、彼にそう言うと、彼は「あんたの足が遅いんよ。バスの前で待ってたじゃん」と言う。「ごめん、ごめん」という謝りの言葉もない。てなわけで、その時、一時的に、ジャイアンとネズミ男君の人間関係が崩れたのでありました。バスに隣同士に座っても会話なし。

こういう事って長くは続かないものだ。いつの間にか仲良しに戻っていた。のび太君やスネオ君は、この経緯をしらない。彼らはそれぞれに貝殻を拾い、車内で僕達に見せてくれた。色とりどりの貝殻は、僕達を和ませてくれた。

さあーー次へ出発だ、どこだったっけ?。

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