とっちゃん坊や達は、後ろ髪を引かれるような思いで、ホテルを後にした。懸命に手を振る、ひげのお姉さんが印象に残った。さああ、我々はこれからどこへ行くのか?。

スケジュールを見ると、「沈下橋(ちんかばし)を歩いて渡る」。自然がそのまま残った日本最後の清流、「四万十川遊覧」とある。「これはおもしろそうだぜ」と、ネズミ男君が言う。とっちゃん坊や達にとっては初めての経験だ。スネオ君はあまり関心がなさそう。

ええええつ、なになに、「沈下橋(ちんげばし)を渡るって」と、ジャイアンが茶化して言うと、「あんた、なんて不謹慎なことを言ってんの」と、のび太君に肩をたたかれ、たしなめられた。「わかってますよ。冗談、冗談」と、僕ジャイアンは苦笑いだ。

てなわけで、ガイドさんは休むことなく、解説を加えながら我々を山奥へ導いていく。いい加減、バスに乗っていることにくたびれてきた。車窓から外を見ると、木々ばかりで、家の一軒も見えない。だあれもいない。川だって見えない。

しびれを切らしたネズミ男君が「沈下橋はどこ、どこどこ。どこなの。出てらっしゃい」と、コマーシャルにあるような台詞を言った。ツアー客の仲間達はどう思っているか知らないが、無言のままだ。果報は寝て待てということか。

1時間半ぐらいバスは走ったか?。ガイドさんが、「もうすぐ沈下橋が見えます」という。確かに左手前方に橋が見えた。浅そうな川に高さ2メートルはあるだろうか、木造の支柱に幅3メートルくらいの橋がかかっていた。「ここを渡るのか?。楽勝だぜ」と、とっちゃん坊や達は、気負いながら渡り始めた。川に目をこらすと。鯉みたいな魚が悠々と泳いでいた。

ガイドさんが言う。「ここは 生活道路としての橋で、車も通ります。浅いところは水深が1メートルくらいしかありません。決して飛び込まないように。怪我をしますから。大雨が降ると、水かさが橋の上まで来ます。大水で、橋が沈下します。それはそれは想像に絶する光景です」と言う。「なるほどねえーーー、それで沈下橋なのか?。わかんなーーーーい」である。こういう天気の良い日に渡っても実感がつかめない。

沈下橋で、外のおいしい空気を吸ったので、やおら元気が出てきた。ただ、民家もなく、我々以外に誰もいないのが薄気味悪い。要するにここは山林に囲まれた山奥というわけだ?。

沈下橋に別れをつげ、バスは四万十川を目指して進んだ。進めど進めど川が見えてこない。木立が邪魔をしてバスの走路からは川が見えないのだ。30分以上は走っただろう。やっと、船乗り場がある広場へ到着した。屋根付きの船が数隻停泊していた。ここから遊覧するわけだ。

ツアー客達は船乗り場まで急いだ。じっちゃん、ばっちゃんたちは、相変わらず元気だ。誰一人落伍者はいなかった。



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