四万十川で自然を堪能して、いよいよ高知とお別れだ。既に3県をまわった。最後は愛媛県だ。正直、どこが何県だったか全くわからない。学校で学んだ歴史と地理の記憶はすっかり飛んでいる。「忘却とは忘れることなり」である。

さてさて、「なにか買い物の忘れ物は、なかったかなあーー」と、ネズミ男君へ聞くと、実はあったのだ。「坊さん簪、買うを見た」という歌て思い出した。日頃行きつけの「梓」という小料理屋のママさんから「わたしお土産に簪が欲しいわ」と言われていた。簪と言えばやはり高知県か?

旅から帰るとネズミ男の誕生日がやってくる。ママさんにお土産を渡すと、お返しに誕生日祝いの美酒に預かれるのでは?というネズミ男君の浅はかな考えだ。僕ジャイアンもネズミ男に同調した。残念ながら、高知市では、そのことを二人ともすっかり忘れていたようだ。

しかるに、天は我々をまだ見捨ててはいなかった。なんと、次に訪れる場所は愛媛県の宇和島市でここは日本有数の真珠の産地である。知らなかったなあーー。ネズミ男君が言う。「そこには真珠の簪があるやもしれぬ」と。僕は一瞬「うーーーーーーん」とうなった。「たとえあっても、相当に高いぜ」と。ジャイアンが言うと、ネズミ男君が「あんたも半分出すだろう」と、おねだり顔で聞く。

まあ、日頃世話になっている店だから、「僕も、すこしは出すよ」で決着だ。相変わらずバスガイドさんの懇切丁寧な話が続く。乗車時間も結構長いようだ。いつしか、とっちゃん坊や達は眠りについたようだ。他のツアー客も同様だ。今回の旅で思ったこと。ツアー客達のマナーが良いことだ。我々みたいに無駄なおしゃべりはせずに、黙々とスケジュールをこなしている。じっちゃん、ばっちゃん達の心の中を覗いてみたいと思った事よ。

そうこうするうちに、宇和島の真珠会館という所に着いた。とっちゃん坊や達には、縁のない会館だったが、簪があるやもしれぬと、店内に入った。店内の従業員さんに聞くと、あった。あった。だが、数は少なく、種類も二種類。高い方は真珠球がついて、願いましては7千円。安い方は5千円だった。「安い方にしとこうぜ」とジャイアンが言うと、ネズミ男君は首を縦に振らない。即、従業員さんに言うではないか。「ねえーー、7000円の物を5000円に出来ないかなあーー}と。な、なんと、従業員さんは「いいですよ」と、一発発返事でオッケー。

何故、オッケーになったのか分析してみた。そうそう、簪を買うとき、ネズミ男君は帽子を脱いでいた。あたかも、高僧かと思わせる容姿。これが良かったのだろう。「坊さん、簪買うをみた」。笑っちゃったぜ。結局。ネズミ男君とジャイアンが二千五百円ずつの出費だ。

ついでに後日談を書いておこう。旅から帰り、ネズミ男君とジャイアンは、小料理屋「梓」を訪れた。ネズミ男君は、すかさず土産をママさんに手渡した。ママは即、ケースを開け、簪を取り出した。「あら、すてきねえーー」と言って、鏡の前で装着した。たいそう気に入ったようだ。和服姿のママの黒髪によく似合っていた。そこで、僕、ジャイアンが言ってやった。「実はねえーー、ママ、これ高かったんよ。7千円したんだ。二人で割り勘したよ」って。ママはいたく感動。今度のネズミ男君へのお返しが楽しみだ。うっしっしーーー。



コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

この日記について

日記内を検索